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コラム

防水工事で節税できるってご存知ですか?~国税庁の基準を解説~

2024.09.13

アパートやマンションを所有されているオーナー様は、税制に関して一般の方よりも詳しいかもしれません。しかし、建物のリフォーム費用が経費として認められるのか、それとも資産と見なされるのか、迷われることも多いでしょう。外壁塗装や屋根塗装などのリフォーム費用が全て経費として認められるなら安心ですが、税金の仕組みはそう単純ではありません。本コラムでは、防水工事に関する税務の基準について、分かりやすく解説いたします。

リフォーム費用と税務上の取り扱い

アパートやマンションのオーナー様にとって、建物のリフォームにかかる費用が税務上どのように扱われるかは非常に重要な問題です。特に、外壁や屋根の塗装、さらに防水工事などの大規模なリフォームを行う際、その費用が経費として一度に計上できるのか、それとも資産として減価償却の対象となるのか、判断が必要です。


税務上、リフォーム費用は大きく2つに分類されます。一つは「修繕費」で、これは建物の現状を維持するための修繕や補修にかかる費用を指し、経費としてその年に全額を計上することができます。例えば、経年劣化で傷んだ外壁や屋根の部分的な塗り直し、漏水が発生した際の補修などは修繕費に該当します。


修繕費とは

修繕費とは、建物の原状回復のための費用です。具体的には、以下の費用が修繕費に該当します。


・壊れた箇所を修理する費用

・老朽化した設備を交換する費用

・塗装や防水工事などの費用

・地震や台風などの災害によって損傷した箇所を修理する費用


修繕費は、費用が発生した年度に経費として計上できますが、これは、修繕費が建物の価値を増加させるものではなく、現状維持のための費用であるためです。


一方で、「資本的支出」と判断されるリフォームは、建物の価値を増加させる工事や、耐用年数を延ばすための大規模な改修にかかる費用です。これらは一度に全額を経費計上することはできず、国税庁が定める耐用年数に基づいて、数年にわたって減価償却を行います。たとえば、屋根の全面的な張り替えや外壁全体の改装などが資本的支出に該当する可能性があります。


資本的支出とは

資本的支出とは、建物の価値を増加させるための費用です。具体的には、以下の費用が資本的支出に該当します。


・建物を増築する費用

・建物を改築する費用

・建物の設備を更新する費用

・建物を取得する費用

・土地を取得する費用


例えば、防水工事が大規模で建物の価値を高めるものである場合、費用は資本的支出とみなされ、耐用年数に応じて減価償却の対象となります。一方、単なる修繕や維持のための工事であれば、修繕費として一度に経費計上することが可能です。


具体的な違いは、以下のとおりです。



経費として認められるリフォームの条件

リフォーム費用が税務上経費として認められるためには、その工事が「修繕費」に該当することが必要です。修繕費として経費計上できる条件は、建物の機能を維持するために必要な修繕や、元の状態を回復させるための補修工事であることです。これにより、オーナー様はその費用を工事を行った年度の経費として一括して計上でき、即座に税務上の負担を軽減できます。


具体的に、防水工事や塗装工事が修繕費として認められる条件


建物の外壁や屋根の一部が経年劣化により損傷し、その部分を補修する場合

・外壁のひび割れや塗装の剥がれを補修し、防水機能を回復させる工事

・雨漏りが発生した際の防水工事


修繕費として認められない場合

建物全体の価値を大幅に向上させるような大規模な改修や、機能を拡充させる工事は「資本的支出」と見なされ、経費として一度に計上することはできません。そのため、リフォーム計画を立てる際には、工事内容が修繕費に該当するかを慎重に判断し、必要に応じて税理士などの専門家に相談することが重要です。これにより、無駄のない税務処理が可能となり、オーナー様にとって有利な節税が期待できます。


資産と見なされるリフォームと減価償却

リフォーム費用が「資本的支出」として資産と見なされる場合、その費用は経費として一度に全額を計上することはできません。代わりに、その費用は資産として計上され、国税庁が定める耐用年数に基づいて減価償却を行います。


減価償却とは

減価償却とは、資産の価値を使用期間にわたって少しずつ経費として計上していく方法であり、これにより毎年の税務負担が平準化されます。


資本的支出と見なされるリフォームには、建物の価値を増加させたり、耐用年数を延ばすための大規模な工事が含まれます。例えば、外壁や屋根全体の大規模な改修、設備のグレードアップ、建物の増改築などが該当します。これらの工事は、建物の原価を引き上げるため、その費用は資産計上され、耐用年数に応じて少しずつ経費として計上されることになります。


減価償却のプロセスについて、さらに詳しく説明します。


減価償却の基本

資本的支出として資産計上されたリフォーム費用は、税務上、一度に全額を経費にするのではなく、その資産が使用される期間(耐用年数)にわたって、少しずつ経費として計上します。これが「減価償却」と呼ばれる手続きです。


耐用年数と減価償却額の計算

耐用年数は国税庁が資産ごとに定めており、例えばリフォームによって資産価値が向上した建物の耐用年数が20年と設定されている場合、そのリフォーム費用を20年間にわたって経費化していくことになります。


具体例でご紹介します。

・リフォーム費用: 1,000万円

・耐用年数: 20年


この場合、毎年の減価償却額は次のように計算されます。


1.減価償却額の計算:1,000万円÷20年=50万円

2.毎年の経費計上額:毎年50万円を経費として計上します。


これにより、1年目から20年目までの間に、毎年50万円ずつ経費として計上されます。このプロセスが「定額法」による減価償却と呼ばれ、毎年同じ金額を経費として計上します。


減価償却の意義

このように減価償却を行うことで、資産の取得や改修にかかった費用を、その資産の使用期間にわたって少しずつ経費として計上することができます。これにより、毎年の利益と経費をバランスさせ、適切な税負担を行うことができるようになります。


例えば、もし1,000万円を一度に経費として計上できた場合、その年の利益を大きく圧縮してしまい、税負担が一時的に極端に減少する一方で、翌年以降の利益が不自然に高くなり、結果的に翌年以降の税負担が増加する可能性があります。減価償却はこのような税負担の不均衡を避け、資産の使用期間にわたって適切に経費計上を分散させる役割があります。


このように、資産と見なされるリフォームについては、適切な耐用年数の設定と正確な減価償却計算が不可欠であり、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。


まとめ

防水工事は、適切な税務処理を行うことで節税効果を得られる可能性があります。修繕費として経費計上できる場合、一度に全額を経費として計上でき、即座に税負担を軽減できます。一方、資本的支出と見なされる場合は、耐用年数に応じて減価償却を行い、長期的に経費化します。工事内容に応じた適切な税務処理を行うことで、オーナー様にとって最適な節税が可能です。


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